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八坂神社に通じる築島(明神)小路に根付いた小さな喫茶店

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喫茶オルタナ/CafeAlterna


喫茶オルタナ/CafeAlterna

令和の時代、尾道の飲食店の味は?

2017年の新年が始まったばかりの頃か、八坂神社に通じる築島(明神)小路を吾輩が歩いていると、以前はよく世話になった元「親公香」だった建物と南隣の建物の2軒が改装中だった。そのときは2軒をまとめて使ったちょっと広めの店舗でもできるのかな、と思いながら通り過ぎていた。数週間が経ち、新店舗が2軒できることを知った。一つは「喫茶オルタナ」、もう一つはクロワッサン専門店「キャッスル ロック」だ。
喫茶オルタナを訪ねたのは、中華食堂「一楽」の店主のご推薦があったからだ。新しい店に一人で行くのは、どうも吾輩は好まない。それというのも、期待して入って落胆して、帰りながら二度と来たくないという店が、最近は尾道でも結構出来ているからだ。昭和の時代では、尾道人は口が肥えているとよく言われていた。それだけにファーストフードや全国展開するチェーン店は殆どなく、尾道に馴染まなかった。裏返せば、隣接する福山市や三原市から尾道の食事処によく来られていたということだ。
今は、平成を過ぎ令和という年号に変わった。そしてスマホで簡単に綺麗な写真が撮れるという、誰でも写真家気取りで、SNSに流して喜んでいる『インスタ映え』の時代となった。そう書いている吾輩も、実はその部類であることを自覚している。
美しいものを見て写真に撮りたいと思うのは、ヒトの全うな欲望だろう。被写体が食物の場合、美味しいかどうかもわからないが、見た目が綺麗だからと遠くからやって来られる若者が増えていると聞く。美味しい料理は基本的に盛り付けも美しいはずだが、例外は当然ある。近江商人の『買い手よし売り手よし世間よし』が商いの本質だと思うが、味はともかく「インスタ映え」ばかり考える店があったとしたら、尾道のブランドは細るばかりだ。買い手も買い手で、味はともかく尾道に来たという証の食べ物を写真でパチリでは、旅費と時間がもったいないと思うのだが、それは要らぬお世話だろうか。
喫茶オルタナ/CafeAlterna
その点、ここ『喫茶オルタナ』は、その対象に非ずだ。
この店は2017年1月28日開業というから、たった三年半を越えたくらいだが、もう尾道にしっかりと根付いている。地元・尾道市民の舌と心を捉えているようだ。そのわけは、喫茶オルタナのWEB SITEを見れば、すぐ納得するだろう。
WEB SITEには、店主の思いが表現されている。日替わりランチの一品に必ず付いているココット容器に入ったデザート、その写真の下には『毎日のランチには小さなココットデザートがつきます。直径5cmの小さな器、ふたくちくらいで食べられる小ささですが、だからこそ丁寧に作ってます。』とのコメントがある。そして、店内の黒板に白墨(チョーク)で書かれた日替わりランチメニューを紹介する写真の下には、『美味しいと言ってもらえますように』というコメントだ。料理に対して真剣に取り組む姿勢と店主の謙虚さが伺える。
吾輩の飼い主は、この店にちょくちょく顔を出し、ヘルシーな昼食とスペシャルブレンドの珈琲を美味しくいただいているようだ。

「喫茶オルタナ」のオルタナって?


喫茶オルタナ/CafeAlterna
店主に店名の意味を尋ねたら、「型にはまらない」という意味を込めてつけた名前だという。店の名刺の裏面には、その説明が書かれていた。オルタナは英語のalternativeからとっていて、(1)「二者択一の」「代替えの」や「既存のものに取って代わる」という意味と、(2)「型にはまらない」、「主流、本流に相対する」という意味で、この店名は(2)だとチェックしてある。学生時代に社会学で学んだ中に唯一記憶があるSein とSollen(ドイツ語)の、Seinという現在あるもの(まま)の姿、端的に言えば本質ということか、と勉強嫌いの団塊世代の吾輩の飼い主が独り言つ。
とにかくオルタナの店内では落語か7、80年代のユウーミンの歌などが流れていて、店内の書棚には店主好みの文学書や「小堀遠州 綺麗さびの極み」「白州正子と歩く京都」「京の坪庭を楽しむ」「京都文学さんぽ」などが置いてあり、吾輩のような浅学非才なものでも、ぺらぺら頁をめくるだけで高尚な気分となり心地良い。
さらに、カウンターに置かれた本のなかには、この店の顧客で隠れキュレーター(学芸員)が居るらしく、持ち込みの建築、陶芸、民芸など、趣味の良い本が置かれ、民芸調の珈琲茶碗を口元に運びながら本を読むひとときは、まさに『オルタナ』だ。
そんな店で店主ひとりで切り盛りしていて、昼の日替わりランチは早々に売り切れになってしまうことがある。ランチは日替わりだけでなく、様々なメニューが用意されていて、それも一人で対応するわけだから、忙しさが一時的に集中するときは、孤軍奮闘の嵐が通り過ぎるようで大変だろうなぁ、と吾輩は想像するばかりだ。
「喫茶オルタナ」の店主は、元来パティシエであり、パティシエは味覚に優れ色彩感覚にも優れていないと務まらない。だからこそランチの盛り付けにも、その美しさにこだわっているように吾輩には思えるのだが…。喫茶オルタナ/CafeAlterna
喫茶オルタナ/CafeAlterna

15時のカフェ(喫茶)タイムで、パティシエに変身


ランチタイムは11:00から14:00で、その後15:00からは店主がパティシエの腕を振るうカフェ(喫茶)タイムだ。喫茶オルタナ/CafeAlterna

吾輩は、この喫茶タイムにお邪魔する機会になかなか恵まれないが、それでもスマホを握って一、二度エセ写真家気分でそのスイーツの美しさを切り撮っているので、ちょっとだけお見せしよう。味はもちろん言うまでもなく美味であった。

[カフェ(喫茶)タイムのメニュー]


メニューの内容は変化していくので、ご確認を!!
オルタナのクレーム・ブリュレ(金・土・日限定)
本場フランスの濃厚でとろりとしたクレームブリュレと、家庭的で懐かしい”お母さんのプリン”のちょうど中間の味・テクスチャーを目指しました。
オーダー後、表面をキャラメルリゼしてパリパリに。映画「アメリ」のように自然と顔がほころぶオルタナの逸品です。
テリーヌ・ショコラ セット(写真のもの)
ベイクド チーズケーキセット
季節のパウンドケーキセット(日によってお任せ)
ミニパフェ喫茶オルタナ/CafeAlterna

Cafeではなくやはり喫茶だと思う理由(わけ)


喫茶オルタナ/CafeAlterna
この店で珈琲(コーヒー)を注文したら一般的なコーヒーカップではなく、民芸調の茶碗が出てくる。茶碗というと飯茶碗を想像する方もおられると思うが、吾輩が調べたところによると、茶碗とはもともと「茶の湯」で茶を飲むのために入れる器を意味していたということだ。そして 喫茶とは、元々は鎌倉時代(源実朝の時代)に中国から伝わった茶を飲用し効用を嗜む習慣や作法を指す言葉だという。吾輩はWEB SITEのエントリー名を何気なく、英語表記でKissaではなくCafeと書いたものの、そんなことを思えば、この店はやはりCafeではなく喫茶と言った方がお似合いだろう。
観察好きの吾輩のこと、その情景を表現してみると、『店主は、珈琲を淹れる合間も気を緩めない。お湯の温度管理はきっちり正確で、コーヒー豆を挽き、いつもの手順でコーヒーポットの細い注ぎ管からペーパードリッパーの上に外周から渦を描きながらお湯を注ぎ、丁寧に淹れる。棚に置かれた茶碗は、店主の趣味に合った器をひとつ一つ買い求めた、お気に入りのものと思われ、どれ一つ同じものはない。今日、店主はどの茶碗を選び、吾輩用に淹れるのだろうか。』
ここではスタバのコーヒーとは一味違った思考の遊戯が存在できる。カウンターの上に置かれた卓上ポップを見ると『この珈琲は、特注のオルタナブレンドで、酸味を抑え、ほどよい苦味が特長のオリジナルブレンド』と書かれた肉筆のメッセージが優しく伝わる。
茶の湯は、不完全なものにも「美」を見出すものだと何かで読んだが、どちらかと言えばお揃いのコーヒーカップで飲むより一つ一つが個性的な味わいのある手作り茶碗で楽しむのも良いだろう。
後日、店主にこの器はどう言ったたらいいのかね?と尋ねると『珈琲椀でしょう』という答え。茶碗に関する思考の遊戯はここまでにして、一応、打ち止めとしよう。喫茶オルタナ/CafeAlterna

(2020年9月12日)

吾輩は少々反省している

実は、お店をご紹介する場合、必ず店主に直接インタビューを行い、吾輩なりに書いた文章を店主にお見せした後にWEB SITEに公開するのが吾輩の流儀だった。ところが、今回はどういうわけか、無意識にその鉄則をみずから破ってしまった。これは「型にはまらない」というこの店の名にふさわしいのかも知れぬと、こじつけがましく独り納得することにした。そんなわけで、今回の「喫茶オルタナ」が紹介文としてふさわしいかどうか、少々気がかりである。
さらに半年前に「喫茶オルタナ」の店名を紹介することなく、このお店の日替わりランチの写真をいっぱい載せて公開したことを思い出した。これは『五感で味わう昼定食』という小タイトルで紹介したもので、店名を載せなかったのには理由があった。それは空気が読めぬ大勢の客がこの店に来て、もし『インスタ映え』の標的にでもされたら、この店の良さを壊しかねないと思ってのことだった。いずれにせよ、吾輩はこの店の一顧客に過ぎぬわけで、勢い余って老婆心丸出しの姿勢には大いに反省するところだ。
(2020年9月13日)


〒722-0045 尾道市久保2丁目6-34
tel.0848-37-6946
営業時間:11:00ー17:00
定休日:月曜日、第2、4火曜日
https://cafealterna0128.business.site/
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